悲しみの始まり

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悲しみの始まり

予感は的中し、桜と先輩が付き合い始めるまでそう時間はかからなかった。 明るくて屈託のない桜に先輩の方から告白したという。 その間私だってそれなりには水を向けたりしたものだが、またもや一向に相手にされなかった。 彼の好みではなかったのだろうが、悔しくないわけではない。 それでも私もまた飾らない桜の事を友人として好きになっていたので、諦めざるを得なかった。 けれど……この時彼が私を選んでくれていたなら、きっと私達みんなの苦しみは減っていたのだ。  今更何を言ったところで過去は変わりはしないけれど…… その後1年程で桜の派遣先が変わって彼女と社内で顔を合わせる機会は無くなったが、私達はどちらからともなく連絡を取り合い、時折食事したり互いの家に泊まったりと親しい付き合いを続けた。 桜と靖彦先輩との付き合いはその後も順調で、職場の遠くなった桜は彼と同棲を始め、同棲開始から2年程でプロポーズを受けたとはしゃいだ声で連絡をくれた。 その頃の私はそこそこ優良だと思う相手と何人か付き合ったが、相変わらずの男運のなさで短期間で別れてばかり。 祝福の言葉を口にはするものの、幸せそうな友人を見るのが辛くて少しだけ距離を置いてしまった。 桜の事が嫌いになったわけではないけれど、愛する人との幸せなゴールが見えている彼女と比べて、ゴールの見えない中で浮気男や見栄っ張りなだけの薄っぺらな男を渡るばかりの私が惨めに思えるのが悲しかったからだ。
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