別れの後

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桜はそれから一年半、苦しい治療を続けた。 抗ガン剤への激しい副反応で身体は痩せ細り、驚くほどの量の鼻血を出したりもした。 放射線治療では髪がごっそりと抜け落ち、更には様々な感染症にも苦しめられた。 私は折を見ては彼女を見舞ったが、その僅かな面会の時だけでもその苦しみように胸が痛んだ。 いっそもう楽にしてあげて欲しいとすら思ったが、彼女の両親はそれでも治療に一縷の望みを託してそれを続けた。 若すぎる娘の死をどうしても認められなかったのだろう。 結局彼女を死に至らしめたのは、感染症からきた肺炎だ。 最後まで苦しんで亡くなった。 人工呼吸器を付けて聞き取りづらかったけれど、桜は最期に一言だけ呟いた…… 「生まれ変われるなら桜の木になって、あの人が幸せになるのを見届けたい……」 そう言って息を引き取った。 享年26歳、あまりにも儚い命だった。
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