壊れてしまえばいい

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見つけた病室は4人部屋で、2つのベッドは使われていない。 使用されてる2つのうちの片方には老人が眠っているので、どうやら彼はカーテンの引かれたベッドを使っているらしい。 流石に同室に寝ている病人が居ては、第一声から怒鳴りつけたりは出来ないなと大きく息を吐いた。 すると不意にカーテンが開いて、中から黒髪美人とその娘らしき小学生くらいの少女が出て来る。 黒髪美人は私を見て大きな瞳を更に丸くして、ベッドに向き直った。 「また女の子! 靖彦、あなた……」 「姉さん、その子は大学の後輩。追い返さなくて大丈夫だから。同じ会社に勤めてるんだよ」 どうやらこの女性は彼の姉のようだ。 ならばその後ろに居る小学生くらいの無表情な少女は姪なのだろう。 「あら、そうなの。てっきりまた……」 「余計な事は言わなくて良いから。朱音も宿題あるんでしょ」 先程の自称彼女らがここで何か騒いだらしい。 眉を顰める姉という人の様子からは心配と不快感と、好奇心が窺えた。 修羅場を楽しめる余裕のある女性らしいが、流石に小学生の前では遠慮したいといったところか。 「……必要なものがあったら言って。洗濯物取りに来るから、その時に持ってくるわ。ちゃんと休むのよ」 「はいはい」 こうしているといつも余裕の表情の靖彦先輩でも、弟の顔になる。 私は何だか毒気を抜かれてしまった。
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