はぐき

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はぐき

 ※この話はTBSラジオで放送されていた「エレ片のコント太郎」のコーナー を書籍化した富岡蒼介著「私、一回、死んだのかの知れません」の中で 採用されている内容です。提供者は私です。 著者の富岡氏より直接取材を受けてお話しましたが、その中の一部を 取り上げて頂きました。今回フルバージョンでお届けします。  既に何度かネタにしているKという男の体験である。  もう数年前の話だ。Kは怪談マニアでその日も怪談や心霊系のDVDを自宅のマンションで見ていた。  時間は深夜を過ぎたころ。映像を流しているテレビの画面からふと目を上にあげるとそこにゴム鞠ぐらいの白い球が浮いている事に気が付いた。  「なんだろう?」と想って目を向ける。  するとその玉。風船が膨らむように大きくなっていく。更に、その中には黒い影の様なものが浮き上って来た。  そしてモヤの様にぼやけていた黒いモヤは、モザイクが溶けていくかのようにゆっくりと形を作り出していった。  目……鼻……口……眉……髪。 「あ、顔だ。女の顔だ」  そう想った途端。女の生首となってそこに浮いているという。  流石に驚いたが目を逸らせずに見つめると、女と目が合った。  すると、女の生首がす~と浮かびながら自分に近づいて、ソファに座っている自分の真上でピタっと止まったかと想うと。     突然自分の胸めがけてに迫って来たかと想うと、  ズバンッ    身体を突き抜けて言ったという。  でも、話はこれで終わらない。  やはり、別の日。同じように白い球が現れた。あの時と同じように初めはゴム鞠ぐらいの大きさだ。   やがてそれは膨らんでいく。が、今度は縦に大きく広がっていく。  そして、完全に白い服を着た女の姿になった。  余りの事に呆然としているK。そしてやはり目があってしまう。すると女は身を浮かしたまま、彼に近づいてきた。  更に、すぐ間近でピタリと止まったかと想うと、こちらに迫ってくる。    ガツンッ  顔に何か当たる衝撃がした。  自分の顔に女の顔が当たったのだ。唇と唇が当たる。  でもそれはキス……口づけ。などという甘いものを感じせる状況ではなかった。     こちらの唇が女の唇とびったりくっつき、更にそのままぐいぐいと押し当てられていく。  まるで自分の顔に相手の顔がめり込んできてるような凄まじい圧迫感。  唇越しに自分のはぐきと相手のはぐきがガッチリと嚙み合っているのを感じくらいの生々しさを感じた。 (く、苦しい……。もうだめだ)と想った頃。  ズバンッ  女の身体が自分の身体全体を突き抜けた。
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