8/8
前へ
/64ページ
次へ
 「禁止にするより手紙の書き方を学ぶ機会を作っては?  国語や道徳の授業で……」  出勤後の慌ただしい打ち合わせで瀬尾も意見を出したが、及川も小渕沢もそれぞれに  「今は時間がないわ」  「そんな暇ないでしょう。カリキュラムが追いつかない。  もう年度末なんですよ?」  と言って取り合ってもらえなかった。  まだ二年目の新米の意見など、一瞬で捻り潰されてしまう。    「みんな。及川先生が言ったこと、きちんと守りましょうね」  2組の教室に戻ってから、学年集会の振り返りが行われる。  学年としての決定事項なので、自分の意に反することでも伝えなければならない。  ぐるりと教室を見渡せば、子供たちは澄んだ目でこちらに注目している。  瀬尾の言葉を信じ、吸収しているのだ。  この可愛い子供たちと目を合わせる資格が自分にあるのか。  瀬尾は、罪悪感を飲み込んだ。  
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加