2/13
前へ
/64ページ
次へ
 「今、何してた? どうして答えられないんだ」  小渕沢が紙切れを突き出す。  折り紙が二枚。裏に何か書いてあるようだが、瀬尾の位置からは見えなかった。  「首を傾げてるだけじゃ分からないよ。  どうしてこんな物を写させたりしたの?」  「ちゃんと先生の目を見なさい」  及川からも厳しい声が飛ぶ。  「朝の学年集会で言ったばかりだろう!」  立たされているのは三人だが、叱責は主に千乃に向かっているようだ。  予鈴が鳴った。間もなく五限目が始まる。  それを潮に、葵と凛音は解放された。  及川は野次馬の児童たちを促しつつ教室へ戻っていき、瀬尾もそれに倣う。  廊下には頬を強張らせた千乃と、小渕沢が残った。  「ほら、みんな。前を見てね」  子供たちは五限目が始まっても廊下の方が気になるらしく、よそ見ばかりしている。  瀬尾は子供たちを宥め、授業に集中させるのに苦労した。    千乃への叱責は、五限目を半分過ぎるまで続いた。  
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加