31人が本棚に入れています
本棚に追加
2)
その日、下校前にも3年生の児童が集められ、及川の口から改めて禁止事項が伝えられた。
校内での手紙のやり取りは禁止。
昼休みの出来事を受けての話だった。
午前からの雨は止む気配がない。
傘の花が雨に打たれながら、ぞろぞろと校門を通り過ぎていく。
瀬尾は千乃たちのことが気にかかったが、大勢の児童に紛れて見つけることができなかった。
「これですよ」
職員室で、小渕沢が二枚の折り紙を示した。
及川と瀬尾が覗き込む。
【ひどい人がいるから 気をつける】
茶色の折り紙の裏側に、鉛筆で書かれていた。
そして、何故か同じものがもう一枚。
「中嶋 千乃が伊藤 葵に、この手紙を強制的に書かせていたんです」
今日の昼休みのこと。
小渕沢が教室内で連絡帳に目を通していると、例の三人がまた固まってコソコソやっていた。
千乃が何かを書いており、葵がそれを覗きながら写し取っているようだ。
凛音は笑いながら眺めている。
嫌な予感が働いた小渕沢が様子を見に行くと、三人は一斉に紙を隠した──。
最初のコメントを投稿しよう!