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 2)  その日、下校前にも3年生の児童が集められ、及川の口から改めて禁止事項が伝えられた。  校内での手紙のやり取りは禁止。  昼休みの出来事を受けての話だった。    午前からの雨は止む気配がない。  傘の花が雨に打たれながら、ぞろぞろと校門を通り過ぎていく。  瀬尾は千乃たちのことが気にかかったが、大勢の児童に紛れて見つけることができなかった。    「これですよ」  職員室で、小渕沢が二枚の折り紙を示した。  及川と瀬尾が覗き込む。  【ひどい人がいるから 気をつける】  茶色の折り紙の裏側に、鉛筆で書かれていた。  そして、何故か同じものがもう一枚。  「中嶋 千乃が伊藤 葵に、この手紙を強制的に書かせていたんです」  今日の昼休みのこと。  小渕沢が教室内で連絡帳に目を通していると、例の三人がまた固まってコソコソやっていた。  千乃が何かを書いており、葵がそれを覗きながら写し取っているようだ。  凛音は笑いながら眺めている。  嫌な予感が働いた小渕沢が様子を見に行くと、三人は一斉に紙を隠した──。  
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