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詳細を知らされた及川が腕を組む。
「朝、禁止したことを同じ日に堂々とやるというのはちょっとね。
千乃ちゃんがやったっていうのが信じられないけど」
「それだけじゃない。文面も良い内容とは言えんでしょう」
”ひどい人”という言葉が出てくるところを見ると、小渕沢が言う通りかもしれない。
(でも引っかかる。何だろう、この感じ……)
違和感を持ちながらも、瀬尾は先輩二人の会話を聞いていることしかできなかった。
「手紙を写させて葵さんに罪をなすりつけるつもりだったんだ。
彼女の筆跡で、誰の元へ行くのか分からないんですよ?」
小渕沢がヒートアップしていく。
「今回は未然に防ぎましたがね。
これは大きな問題だ。
十七時に、お母さんを呼んでます」
「そうね……お家の人に知っておいてもらう必要はあるわね。
丈二先生、よろしくお願いします」
及川が深刻な表情で応じた。
瀬尾はまだ違和感が拭えないものの、その正体が分からず発言できない。
ただ。
彼女は、このあと小渕沢が漏らした呟きを聞き逃さなかった。
「よし。よぉし──」
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