7/13
前へ
/64ページ
次へ
 母親からの返答がないと判断すると、早口で告げる。  「友達だからと従ってばかりいては危険です。  伊藤さんの方へも気をつけるよう連絡させてもらいますので」  「はい、それはもう。  お手数をおかけしまして……」  「禁止だと言われたことを堂々とやっておいて、学年主任も含めた教員に囲まれても頑として認めない。  低学年なら泣くくらい厳しい対応をしたにも関わらずです」  「え?」  「五限目の途中までかかりました。  あれは相当ですよ」  「それは、ご迷惑を……」  千乃の母親は、夢でも見ているのかといったような面持ちである。  「親御さんの前じゃどうか分かりませんが、教員の前では大人しい。  そのくせ、休み時間になった途端に友達を『葵!』なんて乱暴に呼び捨てたりしてね」  「はあ」  「娘さんは、そういう子です」  「……」  「大切なのはこれからです。  対話には時間を要するでしょう」  中嶋 千乃の母親は、放心したような様子で帰っていった。    
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加