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母親からの返答がないと判断すると、早口で告げる。
「友達だからと従ってばかりいては危険です。
伊藤さんの方へも気をつけるよう連絡させてもらいますので」
「はい、それはもう。
お手数をおかけしまして……」
「禁止だと言われたことを堂々とやっておいて、学年主任も含めた教員に囲まれても頑として認めない。
低学年なら泣くくらい厳しい対応をしたにも関わらずです」
「え?」
「五限目の途中までかかりました。
あれは相当ですよ」
「それは、ご迷惑を……」
千乃の母親は、夢でも見ているのかといったような面持ちである。
「親御さんの前じゃどうか分かりませんが、教員の前では大人しい。
そのくせ、休み時間になった途端に友達を『葵!』なんて乱暴に呼び捨てたりしてね」
「はあ」
「娘さんは、そういう子です」
「……」
「大切なのはこれからです。
対話には時間を要するでしょう」
中嶋 千乃の母親は、放心したような様子で帰っていった。
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