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「よし」
親にも伝わった。
親は、手紙を写させたのは千乃だろうと言った。
諦めの悪いことに、「娘は認めているのか」などという質問をぶつけられたが。この期に及んで。とんでもない親がいたものだ。だから子供がああなる。
ともかく、伊藤家へコンタクトを取ることについては了解を得られた。
最悪の事態を未然に防いだのだ。自分が。
小渕沢は、意気揚々と受話器を取り上げた。
「ああ、葵さんのお母さんですか」
小渕沢は、今日の出来事のあらましを説明する。
『千乃ちゃんがですか? あーちゃんに……』
葵の母親はそう言ったきり、受話器の向こうで絶句した。
「現場を押さえましたから。
良くない手紙を写させている現場、いじめに繋がる現場を」
『いじめ……?』
「しかし、ご安心ください。
こちらは現場を見てるんで、いつでも介入できますからね。
中嶋さんの親御さんにもお伝えしていますので」
『……』
重要な話だというのに、葵の母親は何をぼんやりしているのか。
小渕沢は呆れた。
「言われるままになっていてはいかん。
あの手紙が誰かに渡ったら大変なことになっていましたよ。
断る勇気を持つことを、親御さんからも伝えてください」
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