年度末

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 たった今「キライ」と発言したのが笹木 凛音(りおん)。  家庭環境がやや複雑である。  目を丸くして「何で?」と聞いているのが中嶋 千乃(ちの)。  三人の中ではリーダー格だ。  教師の前では大人しく問題ないように見えるが、彼女に二面性があることを小渕沢は知っている。  そして。  何も言わず、ただそこに居るだけの児童が伊藤 葵である。  とにかく大人しい子で、発言を求められても蚊よりも小さな声を発するか、黙り込むかで終わってしまう。    そんな彼女の唯一の友達が、千乃と凛音だ。  二人について回っているだけで、振り回されているようにも見える。  (何も起こらなきゃ良いがな)  小渕沢は、最後のノートにチェックを入れる。  考え事をして時間を食ってしまった。  テストの採点は会議後にするしかない。  「さあ、帰りの会の時間だよ。日直さーん」  小渕沢が立ち上がると、子供たちは蜘蛛の子を散らすように自席へ戻っていく。  教師という仕事は嫌いではないが忙しい。  効率化しなければやっていられない──。  
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