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 瀬尾が持つ中嶋 千乃のイメージも同じだ。  だからこそ、あの手紙にはずっと違和感を持ち続けている。  少々酔いが回った頭を働かせるように、瀬尾は木で組まれた天井を見上げた。  「千乃ちゃんのイメージとギャップがあるからなのかなぁ。  手紙自体も、なんか変な感じがするのよ」  「その手紙って、具体的にはどんなものだったの?」  瀬尾は記憶を辿る。  職員室で小渕沢が示した二通の手紙。  茶色の折り紙の裏側に書かれていた文面。  【ひどい人がいるから 気をつける】  まったく同じものが、もう一枚。  千乃が葵に書き写させたのだと、小渕沢は言っていた。  「ちょっと待って。  折り紙に書いてあったの?」  オリバーの声が鋭くなった。  瀬尾が「そうよ」と応じると、彼は口の中であの文章を繰り返す。  ひどい人がいるから、気をつける──。  「ねえ、実咲。それは一体、誰が誰に宛てたものなんだ?」  「あッ……」  大鉢の中のおでんは、半分ほどを残して既に冷めきっていた。  「千乃たちが書いていたのは、本当は何だったんだ──?」
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