31人が本棚に入れています
本棚に追加
事が発覚してからの中嶋家の動きは、以下のようになる。
娘がしでかしたことに、千乃の両親は激しく動揺した。
しかも、葵は保育園の頃から仲良くしている友達だ。おとなしい性格であることも承知している。伊藤家のことを思うと、母親はさらに胸が痛んだ。
しかし、いくら諭しても千乃は困った顔で首を傾げるばかりである。
両親は信じられない思いで顔を見合わせた。
この子は、いつの間にこんな風になってしまったのか。
「娘さんは、そういう子です」
担任の一言が思い起こされる。
父親から怒号が飛び、千乃はついに泣き出した。
そして、今朝。
親子間がギスギスした状態のまま千乃は登校、両親は在宅ワークのため自宅に留まっている。
昼食時に改めて娘のことを話し合っているとき、現物を見ていない父親が手紙の内容を問うた。
【ひどい人がいるから 気をつける】
どこか変な感じがした。
昨日は頭に血が昇っていたが──。
「それって……手紙か?」
帰宅後、「あれは手紙とは違うもの?」という問いに千乃が頷く。
「千乃ちゃん、ごめんね」
母親は、泣きながら娘を抱きしめた。
彼女が書いたのは単なるメモ、覚え書きだったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!