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 事が起こった日の朝に開かれた学年集会の内容は、「手紙の禁止」。  及川は児童の前で言った。「手紙は悪口を書くものじゃないよね」と。  ひどい(ことを書く)人がいるから、手紙はダメなんだ。  そうならないように気をつけないといけないんだ。  あの文章は、それを受けて書かれた。  小学3年生なりに考えて、ああいった表現になったのだろう。  そんな時に小渕沢に詰め寄られ、廊下に出された。  教師に囲まれて萎縮していた千乃は、声を出せなかった。  帰宅後は両親からも叱責された。  千乃は混乱しながらも、自分が良くないことをしたのだろうと落ち込んだ。  学年集会を受けて書かれたメモ。  覚え書きとしては分かりにくい。  しかし。  【ひどい人がいるから 気をつける】  これを手紙と断ずることも難しそうである。  にも関わらず、誰もが手紙だと思った。  何故か。  最初に、小渕沢が周囲に「手紙だ」と伝えたからだ。  そこから、あの文章が手紙だという前提で話が進み始めた。
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