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 3)  瀬尾は目頭を押さえた。  千乃は昨日の昼休みから今まで、誰にも理解されないまま過ごしたのだ。  及川も隣で項垂れている。    「中嶋さんは学年主任にも話を通したいとのことで……」  「当然でしょうね。分かったわ」  小渕沢が申し出ると、及川は居住まいを正した。  すぐに中嶋家へ折り返す。  二度目のコール音の後、電話に出たのは父親だった。  小渕沢と瀬尾は、受話器から漏れる声に耳を傾ける。  父親は、授業を止めてまで執拗に叱責を続けた小渕沢の対応を非難。  また、教師が三人もいながら誰一人としてあの文面の真意に気づかないことに対しても怒りを露わにした。  瀬尾は、氷を当てられたように鳩尾の周辺が冷たくなっていくのを感じた。  今回の件がもし、誰にも気づかれず見過ごされていたら──。千乃は、どうなっていただろう。  千乃を追い詰めることに、瀬尾自身も少なからず加担したのだ。
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