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「ふうむ」
小渕沢から千乃らの関係性について聞かされた畠山教頭は、軽く顎を撫でた。
「では、手紙かどうかは別として、いじめの危険性はあるということかね?」
「そうです」
「そりゃマズイよ、丈二先生」
「ですから伊藤家へ連絡したわけです」
「なんだ、ちゃんと対応してるのか」
小渕沢が頷くと、畠山教頭は安心したような表情になった。
「今回は、厄介な保護者に噛み付かれたってとこかねぇ」
小渕沢も畠山教頭と同じ考えであった。
千乃の両親は、娘がいじめの加害者であることを認めたくないのだ。
自分のせいにされたと思うとすぐ牙を剥いてくるクレーマー気質の親は、一定数いる。
母親は「伊藤家への連絡内容を取り消せ」と言っていたが、その必要もないだろう。
「そうだねぇ、危険性があるのは確かなんだし。
何度も電話したら伊藤さんも混乱するだろう」
小渕沢の意見に、畠山教頭も賛同した。
父親の剣幕に圧されはしたが、冷静になってみれば馬鹿げた話だ。
あのメモだって、実は手紙だったという可能性はある。
ひどい人がいるから、気をつける──。
語尾を「気をつけるんだよ」とし、下に名前を書けば立派な手紙だ。
千乃と葵の力関係を見れば、この考えは妥当なところではないか。
ノックなしにドアが開いた。
及川に続いて入室して来た人物に、小渕沢は目を剥いた。
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