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 「殿山先生がどうして?」  一瞬の戸惑いの後、小渕沢はキッとなって眼鏡を押し上げる。  「他学年の問題に口を出さないでいただきたい!」  「いいのよ、彼は」  及川が、声を荒げる小渕沢を制した。  (何故──!?)  及川も畠山教頭も、当たり前のように殿山を受け入れている。  畠山教頭が事のあらましを説明し、及川が必要に応じて補足していく。  小渕沢は苛立ちを隠せない。  神妙な態度の畠山教頭や及川を、信じられない思いで眺めた。  殿山は立ったまま腕組みし、じっと話を聞いている。  「明日の朝、すぐに謝罪しましょう」  「それなんだけどねぇ」  ここで畠山教頭が口を挟んだ。  「ご両親は3年生の担任を全く信用できないそうだ。  この件は私に一任したいと言うんだよ」  殿山がフンと鼻息を吐く。  「昼休みに瀬尾先生も含めて集まってもらう。  私が立ち会いの下で謝罪しよう」  「どうして昼休みまで待つんですか?」  畠山教頭の提案に、及川は渋い顔をした。  「教頭に一任されてるのなら、やむを得んでしょうな」  「え? 丈二先生、おかしいと思わないの?  教室で顔合わせるのに」  及川はなおも異論を唱え、殿山も不服そうに何か言いかける。小渕沢はそれを遮った。
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