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「ご家族が教頭に一任したんだ。
変に動いて刺激しない方がいいでしょう」
殿山から鋭い視線が投げかけられたが、小渕沢は動じない。
畠山教頭が自分の考えに概ね賛同しているからだ。
「学年集会での謝罪はどうしましょう」
そんなものは無視でいい。
小渕沢は、全部を拾って報告する及川のやり方にまどろっこしさを覚えた。
「ダメダメ! おかしな前例を作らないでくれよ」
畠山教頭が必死で手を振る。
「大体、メモじゃなくて手紙だという可能性もまだ残っているんだろう?」
「その通りです」
小渕沢が畠山教頭に加勢した。
あの時、千乃たちは紙を一斉に隠したのだ。後ろ暗いことがあったに違いない。その後も千乃は、こちらの問いかけに答えなかった。つまり、あれは恐らく”手紙“なのだ。
小渕沢が胸を張ると、殿山は自分の顳顬を指差した。
「認識の違いだ」
「は?」
「お前ら、千乃たちにどういう話し方をした?
“何してるんだ”って詰め寄っただけじゃねえのか?」
「どうなんだ」と、殿山は及川に向かって顎をしゃくった。
及川がサッと蒼ざめる。
話が見えない小渕沢は、畠山教頭と顔を見合わせた。
「“手紙”という思い込みがあったのは大人だけなんだよ。
子供は何について怒られたか分かってない。“手紙”じゃないなら尚更だ」
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