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頭をガンと殴られたようだった。
小渕沢は、信じられない思いで殿山を見上げる。
自分は今、こんな男に指摘を受けたのだ──。
殿山が勝ち誇っているように見えた。
「基本が欠けてた……とんでもないことしちゃったわ」
及川が机に手をついた。
「すぐ謝らなきゃ。
昼休みまで待ってる場合じゃない」
「当たり前だ。
謝罪くらい教頭なしでできるだろう」
「ええ」
「学年集会での謝罪は効果はないかもしれん。ガキ共はもう忘れてるだろうからな。
ただ、親にしてみれば当然の要求だ。間違ってもクレーマー扱いするなよ」
及川が神妙な顔で口を引き結ぶ。
殿山は、顎に手を当てて嘆息した。
「あとは、伊藤 葵の方に早く連絡してやれ。
子供がいじめられてるなんて報告受けて、嬉しい親なんかいねえだろ」
小渕沢は奥歯を噛み締め、怒りを顔に出さないよう必死だった。
自分の判断を悉く否定してくる。まるで嫌がらせだ。
「あいつら、普通の昼休みを過ごしてただけじゃねえかよ。
どこに騒ぎ立てる必要があった?」
殿山が、小部屋に集う面々をギラリと睨んだ。
「無能が雁首揃えやがって」
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