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 「伊藤 葵の母親が来てます」  殿山が3年生のシマに歩み寄ってくる。  小渕沢は不快感を隠せない。    「こんな時間に非常識な。  どうして断ってくれなかったんですか」  「今時は母親だって仕事してるでしょ。  心配じゃないんですか、自分のクラスの児童が」  「……」  「隣の会議室ですよ」  こんな嫌がらせまでされるのかと、小渕沢は憤慨した。  「先生、赴任の挨拶でおっしゃってましたよね?  ”よく聞く”のがモットーだと」  「線引きは必要です。  こんな対応したら、保護者が増長するだけでしょう」  「今さら追い返すんですか?」  小渕沢は仕方なく立ち上がった。  (会議はサボる癖に余計なことを!)  苛々と職員室を後にする。  殿山の声を背中で聞いた。  「どうもお疲れ様です。  先生」  
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