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「……あのですねぇ、お母さん」
小渕沢は何とか微笑を保つ。
「そういったことは、その日に言っていただけると。
時間が経ってしまうと対応しようがありませんのでね」
「はあ、す、すみません……」
葵の母親は、怯えた小動物のように目まぐるしく黒目を揺らした。
(まったく。
この親にして、あの子ありって感じだな)
とはいえ、葵を含めた三人組については以前から懸念があった。
いよいよ問題が顕在化してきたか。
「まあ、心配ではあります。
子供たちの間には力関係が存在しますから」
「は、はあ……」
「こちらでも様子を見ておきましょう。
お母さんも、遠慮されずにいつでもご連絡くださいね」
いじめの端緒を掴んだ。
小渕沢は、そう考えた。
ただでさえ忙しいのだ。
早めに手を打たなければ──。
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