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 「もう終わったんですか?」  会議室を出てすぐ、書類の束を抱えた殿山に出くわしてギョッとした。  廊下は既に薄暗い。  「伊藤の母親、あまりスッキリした顔つきではなかったようですが」  「ポイントを絞れば、面談なんてすぐ終わりますよ。  立ち聞きはやめてください」  小渕沢は目を三角に尖らせた。  「教室に戻る途中だったんですよ。  俺ぁ、効率的な人間じゃないんでね」  殿山は、立ち聞きなどしていないと言外に匂わせてくる。  小渕沢は、構わず殿山の横をすり抜けた。  「何が”遠慮なく連絡しろ”だ。  先週、忙しいからってお前が応じなかったんだろうが。  及川が言ってたぞ」    聞いていたんじゃないか──!  憤然として振り向いた時には、殿山は既に暗い廊下の角を曲がっていた。  小渕沢が殿山とまともな会話をしたのは、これが初めてだった。  
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