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第一話 雪奈(大学生)の話
私が所属しているのはオールラウンドサークル(よく“オーラン”と略される)で、季節ごとにみんなと色んな観光地へ旅行したり、アウトドアを楽しむことが主な活動。
そして私の彼氏となる海斗とは、そのサークル内で出会った――。
大学一年生で入学して間もない頃。
まだ友達も全然少なかった私に、同じ学部の友人から「サークル入ろうよ! 知り合いたくさん増えるし!」と誘われたのがキッカケで、数あるサークルの中から一番楽しめそうなところを選んだ。
大学生の代名詞とも言えるサークル活動。根気を詰める部活とは違い、気の合う仲間達で和気藹々と出来るのが強み。
少し緊張しながらも説明会に参加すると、予想より多くの男女がいてビックリした。辺りを見渡した友人がポツリ。
「うわ~、けっこう混んでるわ」
「それな」
オーラン系では一番人が多いサークルらしく、その理由は他と比べてしっかりとした活動をしているからだそう。サークルは運営が適当だと、ただの“飲みサー”と化すことがほとんどらしい。
そして、そんなサークルの説明会を受けていた中でも、一際目立っていたのが同学年の海斗だった。
高校までバスケ部だった彼は身長が高く、爽やかな短い黒髪に整った顔付きをしており、一目で『あれは絶対モテるわ』と思われるタイプ。
サークルに入るもう一つの理由――それはもちろん“出会い”でしょ。
私は、高校生の時に半年間付き合っていた彼氏とは卒業間際に別れてしまったため、独り身だった――。
別々の進路へ進むことになった私と当時彼氏だった雄大は、お互い初体験もしていないウブな関係だったが。
「雪奈……キスしていい?」
「……うん」
夜、彼の部屋でいいムードになった勢いで、いよいよエッチが始まろうとしていた。今日は雄大の両親もおらず、絶好のチャンス。
そんな予感を感じていた私は、雄大の家へ来る前にアンダーヘアの手入れを一応してきて心の準備も万端。
「お互いに服を脱がせ合おう」という雄大の提案を、恥ずかしながらも受け入れた私が、彼の着ていた上着から脱がしてみる。
ところが――雄大の脇から“チョロン”と一本、もの凄く伸びたワキ毛を見た途端、私の心の中で何かが“スー”と引いていくのを感じた。
「……どした?」
「んーとごめん、ちょっとトイレ借りていい?」
その後、部屋に戻った私は「生理きちゃった……」と嘘をつき、その場を強制的にシャットダウンさせた。
え? 何で私だけそういうとこ気遣ってんの? あんた、そんな“ふざけたワキ毛”に気付かないくらい何も考えてないの? こちとら初めてなんだが?
とは言えずに自宅で悶々としていたら、雄大に対する熱が急激に冷めていたことに気付く。
呆気なく終わった高校時代の恋。
無論、大学生活では『リベンジを果たしたい』という想いが強く、積極的に攻めに行こうと私は決意していた――。
月日が経ち。
なんだかんだでライバルの多い海斗だったが、何とか連絡先を交換し、サークル外でも二人きりで会える関係まで持ち込んだ。
そして、ある日の夜。
二人はお酒を飲みながら、カラオケで喉がガラガラに枯れるくらい騒いだ。制限時間が近づき、そろそろ帰る頃かと思った時だった。
私をまじまじと見つめてきた海斗に「どうしたの?」と尋ねると。
「雪奈さ、俺と付き合ってくれない?」
「……うん!」
出来れば酒に酔ってない時の方が嬉しいけど、それでも私は心中でガッツポーズを決めた――。
その流れのままホテルに向かった私達。
大学生はバイトが出来る。高校生の時とは違ってそれなりにお金があるため、気を使う家よりホテルを選択できるのは心強い。
初めてのホテルに緊張していた私は、正直に自分が未経験であることを海斗に伝えたら。
「え、マジで!? 全然そんな感じに見えなかったわぁ~!」
と驚かれたのが少し嬉しかった。
シャワーを浴びてローブに身を包み、キングサイズのベッドに並んで沈黙する二人。
バクバクする鼓動を感じていると、海斗が指で私の顎を掴んでキスをしようと、目を瞑りながらイケメンな顔を近づけてきた。
そして一瞬目を瞑るのが遅れた私は見てしまう――海斗の鼻から“チョロ”と一本、やけに伸びすぎた鼻毛を。
あ~おわた。
トラウマ再び。
いや、だから何で? 直前のシャワーで気付かないか普通? 化粧台の前に立って一体何見てたの? 鼻毛チェックとか三秒で終わるやんけ。鼻の穴にダンクシュート叩き込むぞマジで。
キスをしながら心の中でそうツッコミまくっていた私は、海斗からローブを脱がされる前に「あ、ちょっとごめんトイレ」と言って、ほぼほぼ雄大の時と同じ形でシャットダウン……どころか、PC本体を鉄バットで破壊する勢いで終わらせた――。
うん……私は“毛”だな。
おっけーおっけー、絶対に毛だわ。
そこさえクリアしてくれたら、もう誰でもいいや。
そう悟りを開いた私は半年後、全身脱毛した別な男と幸せになりましたとさ――。
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