質量を増す雲

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 では一体、鰻を嫌いになるためにはどうすれば良いのだろうか。  手っ取り早いのは、鰻の嫌いなところを羅列して、鰻に対して嫌気が差せばいいのだと思う。  しかし、相手はあの鰻だ。  鰻に嫌なところなんて、無い。  強いて挙げれば高価なところが嫌なのだが、値段を気にして揺れ動く今のこの感情を落ち着かせるには、値段を持ち合いに出しては論理が冒頭から破綻してしまうし、それにお金を出そうと思えば出せる今の状況からすれば全く意味を成さない気がしている。  であれば、他に何か鰻の落ち度を見つけなければならない。  鰻に落ち度さえあれば、僕は鰻を食べずに済むはずだ。  なので僕は考える。  無理矢理にでも考える。  鰻のことを、隅から隅まで考えた。  すると気が付く。  ――鰻の血に毒が含まれることは、あまり知られていないのではないか。  瞬間、頭に雷鳴が轟く。  鰻の血には毒性があり、目などに入れば炎症、最悪は失明に至ると聞いたことがある。  これは紛れもなく圧倒的な鰻の落ち度。  ――やったぜ。 
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