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僕の意識は鋭角な敵意と化し、鰻に向かう。
――鰻は、危険だ。
問題は、その毒性自体も去ることながら、どちらかと言えばその毒性がイマイチ認知されていないことにある。
もし素人が毒性を知らずに鰻をさばき、その手を洗わずに目を擦ってしまったら、鰻は一体どうしてくれるのか。
嘆かざるを得ない。
どうして鰻は毒を持っているのに、フグの毒性のごとく広く認知されていないのだろう。
知らずに我々が毒に侵された場合、鰻はどう責任を取るつもりなのか。
これは鰻側からのアピールが不足していることに他ならない。
つまり鰻がもっと『私、実は毒持ちなんですよ、エヘヘ』くらいの態度であれば、皆もっと気を付けて取り扱い、犠牲者も減るはずじゃないか。
なのに鰻ときたら、意外性でも演出したいのか、全く毒持ち感を前面に押し出してこないものだから、皆バクバク安心して食べてしまう。
もちろん血抜きして加熱すれば安全に食せるものではあるのだが、その危険性の有無を本人が黙っているのは気に食わない。
『私、正直に言うと血に毒があるんでゲスすけど、しっかりと調理して加熱すれば大丈夫でゲスから、もしよろしければ是非ご賞味いただけると嬉しいでゲスよ、ブヘへ。味には、味には自信があるので、どうか見限らないでほしいでゲス、ブヘへ』くらいの謙りが、万物の霊長たる人類に対しての最低限の礼儀ではなかろうか。
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