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であれば、無理だ。
また考えねばならない。
高いから頑張って鰻のことを嫌いになったのに、代わりに出てきた奴がもっと高いのであれば、これはもう、また頑張る必要があるのだ。
つまり僕はフグの嫌なところを考えねばならない。
どう考えてもこのままでは僕はフグに手を出すわけで、でもそれはたぶん本末転倒が甚だしくて震えてしまう。この息苦しい暑さに反して身震いしてしまう。
もっと言えばなんとかフグを回避し、最終的にラーメン、あるいはちょっとお高いカップ麺くらいに落ち着けるよう、僕は思考を調整する必要があるのだ。
なんだかんだで月の半ばに僕が出せるのは、せいぜいそのくらいのはず。
なので僕は急ぎフグのことを考えざるを得ない。
そして少しだけフグのことを想うと、すぐに思い出した。
――そういえば以前、初めてフグ鍋とフグ刺を食べた時、なんだかんだでポン酢の味しかしなかったのに、高い料金を払った手前、無理矢理にそのフワフワした無情感を押し殺していた気がする。
気が付くと全てが流動し、帰結していった。
――つまり僕の味覚は、フグの繊細な旨味の機敏を本当に楽しめるほど発達してはいない。
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