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あいつは特別な子供だった
それに気がついたキッカケは、俺が5歳の時だ
近所の公園で友達とかくれんぼをしていた俺は、大きな木の根っこに躓いて派手に転んだんだ
で。たまたまそこにガラスの破片が転がってたんだ
転んだ痛さとはまた別の、体験したことのない痛みに俺は自分の足を見た
血が吹き出るように一気に出て。びっくりしてその場で固まってた俺に近づいてきたのが幼馴染の直哉だった
直哉は俺の足から血が出ているのに気がついて、大きな目をさらに大きく見開いた
傷口がドクドクして、血の気が引いていく感覚は今でも覚えてる。
死ぬ、と思った
──今思えば、あの時に切ったのは太腿の動脈だった
直哉がドバドバ血が流れ出てる太腿を両手で押さえた
俺はその時、どうしよう、と思ったんだ
綺麗な直哉の手が俺の血で汚れてしまう、って
なのに、、、
気が付いたら俺は、公園の隅の壁に背中をもたれさせて座っていて、
目の前には笑顔の直哉がいたんだ
咄嗟に足の方を見たら、何にも怪我なんてしてなくて。血も出てなくて。
え?ってなってたら、直哉が立ち上がって俺に手を差し出してきた
「皆が探しに来るし戻ろう。
このことは二人だけの秘密な」
そう言って俺の手を力強く引いたんだ
その直哉は、今、俺の目の前にいる
目の前にいる、というより、テレビの中にいる
小学生の時に親と街を歩いててスカウトされたとかで
体験会へ誘われたあと、そのまま芸能事務所に入った直哉は22になった今では誰もが知る人気俳優になっていた
俺は直哉が出演している番組を1分ほど見たあと、テレビを消す
「、、、風呂入ろ、、」
一人ぼやいて、立ち上がる
独り暮らしのワンルーム。風呂だって大して広くない
もっと広いとこにうつれよ、とあいつは簡単に言ったけど、これで充分。身の丈にあう生活環境で何の不満もない
風呂から出ると、スマホが点灯していた
ちらっとそれを見ながら、俺は冷蔵庫を開けて炭酸水を取り出す
直哉がCMに出た関係でたくさんもらったと俺に押しつけていったものだ。俺は炭酸が苦手なのに
ピリピリする。しかも、よりによって強炭酸。
あいつみたいだ
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