第60話 恐怖を越えた先

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第60話 恐怖を越えた先

 「大盤振る舞いだ、太極大結界っ!」  「市街と市民への被害を防ぐ事重んじるご主人様、素敵です♪」    龍宮大合神の操作で、空に巨大な太極図が出現し敵とヒーロー達を吸い込む。  恐怖の大王とヒーロー達が降り立ったのは、ポリゴンで描かれたような広大な空間。  「何か俺ら、変な世界に来ちゃたっしょ!」  「落ち着け、味方が作った土俵だ!」  「龍神様を信じようぜ♪」  「遠慮なく暴れて良いとはありがたい♪」  「うん、全力ぜんか~い♪」  「若さとは、良いですねえ♪」  特殊空間での戦闘も初めてなガラドーン組。  「皆、恐怖の大王が口から光線を出すよ!」  ドラゴンエメラルドマンが仲間達に警戒を促す。  「追い込んだつもり? 死に場所を作っただけよ!」  怪獣化した恐怖の大王の背中からナミダ―メが叫ぶ。  同時に大口を開けて、どす黒い破壊光線を発射する!  薙ぎ払うように振るわれる黒き奔流を散開して回避するヒーロー達。  崩れ行くポリゴン状の謎物質。  「はい皆、ミュージックスタートだよ♪」  ドラゴンシフター三号が操作をすれば、中華な音楽が周囲に鳴り響く。  「この曲は、元気が出て来た♪」  「ヤバイ、バフが来たっしょ♪」  ドラゴンエメラルドマンとガラドーンの全身が金色の光に包まれる。    龍宮大合神からカンフー映画調な音楽は、ヒーロー達に力を与た。  「恐怖の大王の弱点は、人の陽気が生み出すプラスのエネルギーです♪」  「お前はもう、俺達にすでに対策されてるんだよ!」  全員が飛び上がり、ヒーロー達は三方から恐怖の大王に襲い掛かる。  「忌々しい、だが負けはしない!」  恐怖の大王も負けじと触手を伸ばして迎え撃つ。  「ドラゴンクロ―!」  ドラゴンエメラルドマンが両手から光り輝く爪を生やして触手を切り裂く。  「「ガラドーンデスサイズ!」」  機体の中でスクールフォース全員が叫べぶ。  ガラドーンも巨大な鎌を召喚して大上段から振るい、触手を切り落とす。  「龍宮大合神・爆炎キックッ!」  龍宮大合神の足、特急龍神の頭が口を開けて炎を吐きながら蹴りを落とす。  「舐めるなっ!」  恐怖の大王がカウンターで黒い破壊光線を吐き出し、キックと競り合う。  「ご主人様、ここは技キャンセルで受け流しです!」  「くそ、なら次の手で行くぜ!」  格闘ゲームのように出した技を取り消して着地する龍宮大合神。  ガラドーンとドラゴンエメラルドマンも、その両サイドに着地する。  「たっつん、一人だけで突っ走るなよ♪」  ガラドーンからアームドタイガーが語り掛ける。  「一人で何でも抱え込まない、だよね♪」  ドラゴンエメラルドマンも語りかける。  「そりゃそうだが、敵が変形してるぞ?」  「まだ変身を残しているという奴でしょうか、古臭い!」  恐怖の大王の手足が肥大化する。  更には、爬虫面の頭部が左右に割れて兜を被った人に似た頭部が現れる。  「俺達で言う人型ロボもどきになったな?」  「そう言うの見た気がするね?」  「センスが古いっしょ!」  「ナリが変わろうが、負けてたまるか!」  「恐怖に負けない意志が勝つ!」  「皆さん、ここが踏ん張りどころです!」  ゴートマン先生が、スクールフォースに告げる。  「「ガラドーン、ゴーッ!」」  ガラドーンが、三個の頭部を持つ大山羊形態に変形して突進する!  「ドラゴンエメラルド、ビ~~~~ム!」  ドラゴンエメラルドマンが放つのは新たな必殺光線。  エメラルドの光の龍が、金色に輝く大山羊の突進を後押しする。  「ぬおおおおっ! これしきの攻撃で、我はまだ倒れぬぞっ!」  恐怖の大王から男性の声が聞こえる。  突進で突き抜けて振り返ったガラドーンの中からゴートマン先生が叫ぶ。  「愚かなり恐怖の大王、弱体化されてもまだ虚勢を張るとは♪」  ガラドーンのが口に咥えるのは、巨大なデーモニウム。  「ぐわっ! ゴートマン、貴様っ!」  「大分使われましたが返してもらいましたよ、私の資産♪」  ゴートマン先生が呟くと同時に、ガラドーンがデーモニウムを飲み込む。  「止めのチャンスだよ、ドラゴンシフター!」  ドラゴンエメラルドマンが叫ぶ。  「ご主人様、未来から前借りした力も加えてオーバーキルと行きましょう♪」  太極ドラゴンシフターの陽の部分が腹部をさすると機内全体が金色に輝く。  「いや、ちょっと待て! ツッコミが追いつかないけどなんか力が湧いて来る!」  「嘘っ、龍宮大合神のエネルギーが上昇し出したよ!」  「ちょっとジンリー、あなた一体何したのよ!」  「いや、ここは流れに任せてぶっこむ時じゃ!」    龍宮大合神の全身が金色に輝く。  「さあ真打の出番です♪ 私達龍は、開運招福の霊獣♪」  「どんな恐怖も打ち払って見せるぜっ!」  「「アルティメットファンロンバイトッ!」」  太極ドラゴンシフターの叫びと同時に、龍宮大合神が光の龍と化して突撃。  恐怖の大王へ近づくごとに巨大化し、咢を開き巨大な牙で噛み砕いた。  「……おのれヒーロー共、我らは諦めんぞ!」  「何度だろうと、俺達が蹴散らしてやる!」  「テンプレ乙ですね、悪と言うのは懲りぬ者です」    噛み砕かれ光と消えながらも、恐怖の大王叫んだ断末魔の言葉。  捨て台詞と言うべき敵の末期の言葉に返答する太極ドラゴンシフター。    「さあご主人様、帰ってラブラブタイムを要求します♪」  「いや、結界解いたり後始末をしてからな?」  「事後処理は上司達に投げましょう♪」  「お前も役職持ちだろ?」  戦いを終えて、現実空間へと戻るとヒーロー達。  まだ巨大龍形態の龍宮大合神から被害区域に金色の雨が降り注げば、破壊された建物が時を巻き戻すかのように元の姿に修復されて行く。  そうして、暴走した分のエネルギーを使い切り元のロボ型に戻った龍宮大合神。  仕事を終えたヒーロー達は、晴れた空の上で拳を突き合わせると解散した。  スクールフォースとゴートマン先生が乗ったガラドーンは学園の校庭に着陸。  「俺達は、力を合わせる事で恐怖を乗り越えて行ける」    ヒノカミレッドが呟く。  「敵がヤバくて恐くても、皆がいるから平気っしょ♪」  アームドタイガーが笑う。  「ああ、俺達は一人じゃない♪」  スノウブリンガーも仮面の下で笑う。  「何度来たって、私達は負けないよ♪」  プリティボックスは満面の笑みで微笑んだ。  「例え次が来ても、私達以上の後進が迎え撃つからな♪」  プリティジャスティスは不敵な笑みを浮かべた。  「うんうん、皆さん良い笑顔ですねえ♪ 私も良い物が見られました♪」  ゴートマン先生も満足げに笑う。  「さ~♪ 残りの春休みを満喫して、二年生に進級だ~♪」  「「お~~っ♪」」  プリティボックスが音頭を取ればレスポンスが返る。  ガラドーンの中で、スクールフォース組はハイタッチで勝利を喜んだ。  「……勝った、良かった♪」  エメラルドマンこと芽吹伸長は、公園の草むらで大の字になり呟く。  「貰っちゃったからには、大事に使おう♪」  手に持つのは、緑色の宝珠を口に咥えた金色の龍頭のブレスレット。  伸長は龍の力を持つ戦士としての新たな日々が始まりに、胸が躍った。  戦いが終わり、仲間達と別れた後の龍宮大合神。  帰り着いたのは大龍宮の元居た仙郷に着地する。  「……ふふっ、やりました♪ 私、お休みをいただいますねご主人様♪」  変身を解くと倒れ込んだジンリーを、立磨は抱き止める。  ジンリーは。腹を手でさすりながら微笑む。  「いや、ちょ! 意味深な事を言って、やり遂げた笑顔で瞳閉じるな!」    立磨はジンリーを抱き止めたまま戸惑う。  戦いには勝ったが、何がなんだかわけがわからなかった。  「取り敢えず,、相談とかあるから大龍宮の方へ行くぞ!」  ジンリーをお姫様抱っこしながら、移動して義家族と合流する立磨。  「おお、二人共よくやった♪ ……って、ジンリーは何があったんじゃ?」  大龍宮のブリッジでも仲間達が変身を解いていた。  立磨達を見たジンチャオが、笑顔から怪訝な表情に変わる。  「ジンリー? あなた、もしかして?」  「お姉ちゃんのやり遂げた顔、まずは医務室へ運んで!」  「若旦那、姫をゆっくりストレッチャーに乗せて下さい!」  白衣姿のフグがストレッチャーを持って来た。  「よし、しっかりしろよジンリー?」  「……ああ、ついにこの時が♪」  「いや、何か知らんけどまずは医務室だからな?」  立磨とフグが、ジンリーをストレッチャーに寝かせて医務室へと運ぶ。  医務室の自動ドアが開けば、白衣を着た温和そうな愛らしい顔の女医が出迎える。  ゆるやかな金髪にふくよかなスタイル、クラゲの姿が背後に見える。  この先生も、海産物の妖怪なんだなと感じ取れた。  「初めまして若旦那、医師のクラゲです♪ 姫がどうなされましたか?」  「すみません、ジンリーの診察と検査を宜しくお願いします」  「はい、それでは診察するので若旦那は席を外して下さいな♪」  「ジンリーをお願いします、先生!」  「私も残りますね、若旦那」  「フグさんも頼んだ、俺はブリッジに戻ってる」  クラゲ先生達に後を任せて、立磨は医務室を後にした。  「大丈夫かな? あの戦いで敵に何かされたんだろうか?」  ジンリーの異変に不安になる立磨。  「お義兄さん、多分大丈夫だと思うよ♪」  「ジンリーが休むなら、私が二号になろうかしら♪」  「いや、ここは三号の私が繰り上げでしょう♪」  「うん、二人は社長とか開発でお願いします」  ジンファとジンリンの申し出を断る立磨。  「ご心配をおかけしました、ご主人様♪」  「いや、嬉しそうだけど検査とかどうだったんだ?」  「ええ、全ては計算通りに順調ですよ♪」  「腹をさすっているのは、腹が減ったからか?」  「はい、暫くは毎日三人分は食べますね♪」  「いや、わけがわからないよ!」  「太極ドラゴンシフトのおかげで、私達の間に子供ができました♪」  「……ちょ、まさか俺らの体が一体化してたからとかか?」  「はい、合体による一体化ではお互いの細胞も混ざりますので♪」  「マジかよ、だからリンちゃんもジンファさんも何か企んでたのか!」  「危ない所でしたね♪」  立磨は戻って来たジンリーに、とんでもない事を聞かされた。  「何とめでたい、色んな意味で祝勝会じゃ~~っ♪」  「皆~~っ、ド派手にお祝いよ~~~♪」  「まって、親戚一同に連絡しないと」  「俺は、気持ちを落ち着けたいかな?」  「さあ、ご主人様♪ そう言わずに私の隣で、たくさん食べましょうね♪」    恐怖の大王との戦勝の宴は、盛大に開かれる事となった。  「いや、大丈夫かジンリー?」  「ふむふむ、お腹の卵が羊の丸焼きを食べたいと♪」  「卵の内から頭が良いな? はいはい、あ~ん♪」  「私達の卵ですから♪ あ~~ん♪ 至福です♪」  「ご主人様、次は春巻きをポッキーゲームのように一緒に食べましょう♪」  「わかった、野菜も食べような?」  子供と聞かされた立磨は、かいがいしくジンリーに付き合う。  普段から無敵モードなジンリーであったが、その度合いが増していた。  宴会を終えて大龍宮内にある、二人の部屋に行く立磨とジンリー。  「まだ色々気が落ち着かないが宜しくな?」  「ええ、今生も来世も永遠に宜しくお願いいたします♪」  「ああ、永遠に宜しく♪」  立磨はジンリーを優しく抱きしめた。
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