第二節潔癖症

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「御所が御立派に成人された以上、女の私が、まつりごとの細かいことに口を出すのは憚られますが。父上の慣例を基本として、これまで御所が判断をくだされてきたように、慎重によくお考えになってからお決めになって下さい」  母政子は、控えめながらも実朝にそう助言した。  和田義盛は、父頼朝以来の数々の功績を書き立て、上総国の国司になれないのであれば、生涯でこれほど心残りなことはないとまで述べた正式な嘆願書を提出してきた。和田は、源氏一門でもなく、北条のように将軍家と縁戚関係にある一門でもない。  確かに、功績の著しい御家人が国司に任官した例は、数は少ないがないわけではなく、義盛の功績も大きい。  しかし、直ちに、義盛に国司の地位を与えれば、再び他の御家人との均衡が崩れ、争いのもとになるおそれがあった。  北条側との調整も必要となるだろう。微妙で難しい問題だった。
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