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頼朝の親馬鹿ぶりを無視して、義時は、頼朝から奪うように千幡を抱っこして千幡に話しかけた。
「女好きの父君などに似たらおおごとですわい。千幡君は、この叔父めに一番似ているのです。ねえー」
「なー」
千幡は、叔父の言葉を聞いて、にこにこ笑い返しながら、オウム返しの喃語で答えた。
その様子を見て、頼朝は少し面白くない顔をしながら、義時に抱っこされている愛児の顔を覗き込んだ。
「おお、何じゃ?千幡?偉く難しい顔をして考え込んで?」
その時だった。義時の腕の中にいる千幡の尻のあたりから、ぶうという音がした。
義時の着物が濡れ、あたりに異臭が広がった。
「やや!この叔父めに、何という悪さをなさるのだ!」
思ってもいなかった災難に、義時は慌てふためいたように叫んだ。
頼朝は、鼻をつまみながら、どこか勝ち誇ったような顔で、茶化すように言った。
「ようやったぞ!千幡!あっぱれじゃ!さすが、生まれながらの征夷大将軍の子じゃ!」
周囲の者達の間に大きな笑いが広がった。
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