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さっぱりした人だと思うから、その点は私も楽ですけどね。大人なんだからちょっとくらいビギナーの面倒みて欲しい…
「どうした?行くだろ?」
「………」
「もう疲れてる?」
先に立ち上がっていた蒼生センパイが座ったままの私を後ろから覗き込む…ちかっ…
ガタッ…
ぽすっ…
仰け反ると椅子の背が音を立て、私の頭は蒼生センパイのスーツのお腹あたりに収まった。
「俺の腹の音の確認か?しっかり減ってる」
笑いながら私の座る椅子を後ろへ引く蒼生センパイに
「河野が新人の世話するとは9月に雪が降ると思ったけど、知り合いだと楽しんでんのな」
そう言ったのは向かいの席の渡邊リーダーで、彼もさっと出て行ってしまった。アナタ…この課のリーダーでしょ?この距離感を注意しましょうよ…
「……みんな一斉に出ていいんですか?」
「少しは残ってここで食べるだろうけど、出ても大丈夫。11:55から01:05までは営業所を除く全事務所の電話が本社に繋がるようになってるから」
「羨ましいシステムだ…」
「うん?羨ましいって?」
「あ……前の職場と全然違うから」
いつ、どうやって、お昼を食べるのよっ…て思うくらい電話も業務も押し寄せることが多い会社だったから。クリーンな会社バンザイ、だけど…
「今日から毎日、ゆっくりいろいろと聞かせてもらう」
なんて言う、涼しい目元の彼が隣にいることは大きな誤算だ。
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