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バンバンと丈裕くんを叩いて皆が笑っている気配を感じた時に、うまくそっと後ろへ…そしてそっと帰ることが出来るはずだった。友人も固まった笑い顔でそっと一緒に後退した。してくれたのに…
ゴトッ…
「ちょ…史華っ…」
友人の押し殺した声が廊下に向けられ、彼女は素早く私のスマホを拾い上げると私の背中をグイッと押す。でも…
「史華…?」
蒼生センパイの声に続いて
「フミちゃん…聞いてた…?」
「あ〜史華ちゃん、ドンマイどんまい。ヒロがエロいだけだよ」
「そうそう、ヒロがエロいだけ…ブッ…別れる理由が“舌が入れられない”って…ぶっはっ…どんまい…ブッ…」
丈裕くんとあとの二人が私を見て爆笑した。爆笑は二人だけだった気がするけど、笑いは友人に伝染する。
「ごめっ…ん…史華を笑ってるんじゃないよっ」
慌てた友人は私のスマホを振り回している。
「笑ってないけど…言い方だよ、言い方っ。あの言い方に笑っちゃっただけで…別れる理由がっていう…のが…ウチには強烈…キャッ…て感じで…」
分かってる…悪気はないし、悪くない。そうなんだけど、やっぱり堪えきれない笑いを噛み締めた彼らと彼女の空気が、私の初めての恋愛シーンを黒く色づけていった。
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