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朝ご飯を任せっきりにするのは大変だからと、最近はわたしも手伝うようにしている。まあ、それ以上に仁美さんが早起きをして朝ご飯を作っちゃってるから、手伝えるのは盛り付けくらいなんだけど。
制服は汚れるといけないから、パジャマのままで手伝う。ソーセージを切ってそのままになっていた包丁をどかすために握ると、隣でフライパンを握っていた仁美さんはあからさまに警戒して体を強張らせた。
あれ以来、仁美さんは何かに付けてわたしを警戒して注視してくる。それはそれで仁美さんに見つめられているので悪いことばかりじゃないんだけど、あまりいい気分でもない。
「いつまでも心配しないで。もうあんなこと、しないつもりだから」
「……ええ」
「そんなことより」
わたしは姿勢をぴしっと正して仁美さんに向き直る。
「これからもよろしくね。仁美さん」
少しでも安心させてあげようとわたしは、にししと笑ってから、仁美さんの傷を優しく撫でた。すると仁美さんは、少し呆けてから俯いて、ボロボロと泣き出してしまった。
どうして涙を流しているのか見当もつかなくて、わたしは困ってしまう。
そんな顔をさせたいわけじゃない。仁美さんはニコニコと笑っているのが一番なのに、方法がわたしには分からない。一緒にいれば、いつかはまた前みたいに笑ってくれるのかな?
でも、泣いている顔も綺麗だよ。仁美さん。
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