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鳴り響くサイレンの音、ドンッと胸を打つ衝撃。
せり上がってくる感覚に咳き込むと、喉に詰まって苦しかったものがどろどろに抜けて流れていった。
体が固定されていても揺れている。なにかの車の中なのかもしれない。
幾人かのヘルメット姿のひとがうっすらと見えた。
「ミサキッ⁉︎ ミサキッ!」
懐かしいその声は、記憶の中のものよりも少し年をとっていた。
泣いている。
もう何年もおばさんとしか呼んであげられなかった、お母さんが。
「ミサキ、ミサキぃ! あ……シ、ホ、ちゃん……?」
私は電気ショックでまだ痺れる体をやっと揺らして、ゆっくりとかぶりを振った。
「ただ……ま……、おか……さん」
昔より皺の増えたお母さんの顔が、赤くくしゃくしゃになっていく。
慟哭するその声を聞きながら、私は私の中のシホが、今までとは違うかたちになって満ちていくのを、やわい銀河の風とともに感じていた。
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