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「シホ、私は……」
「ねえミサキ。私たちはあの地震の日から、ミサキの中で、ずっとひとつだったよね。でもこれからはもう、私は私、ミサキはミサキに、ちゃんとなっていくんだよ」
「嫌だよ、そんなの嫌」
離れない、シホと離れたくない。しがみついてわんわん泣き叫んだ。
「お願いだからミサキ。そうでないと……」
シホの言葉の語尾が、ふいに頼りなく寂しいものに変わる気配がした。私は、シホを困らせているの?
「私が私に、ちゃんとならないと……そうしないと、私はシホを苦しめる?」
おそるおそる問いをかけると、シホは長い睫毛を少し伏せてから、ゆっくりと唇を開いた。
「苦めはしない。でも、じゃ、もし流されたのがミサキの方だったとしたら? 私がミサキを助けられなかったら、ミサキは私を恨んだ?」
私は無言で、首を横に振った。
「じゃ私が自分を責めて、ミサキの身代わりのようになって、生きていって欲しいと思う?」
私は今度も首を横に振った。
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