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「カムパネルラ?」
呟いてみて、強い違和感がした。違う、私の親友の名はそれではなかった。でも、それじゃあ何という名前だったのか。
名前どころか、顔も声も背格好も思い出せない。彼女は──、
「彼女?」
そう、そうだ、親友は私と同じ女性だった。同じ年頃の、高校生くらいの女の子。
薄暗くメランコリックな車内は無音で、わずかな揺れもない。まるで止まっているように静かに、けれど確かに銀河の海を泳いでいく。
いつか、この光景を見てみたいと願っていた。彼女とふたりで。
彼女も私と同様に『銀河鉄道の夜』を愛していた。
というよりも、私は彼女から薦められてこの本を知ったような気がする。
今私がここにこうしているということは、カムパネルラ、彼女が死んだということ。
銀河鉄道は、善良な心を持つ死者が集うところだ。
だからきっと会える、やっと会える。そう思っていたのに。
絶望したくなる気持ちを抑えて、もう何度も往復した通路に立ち止まった。
まだだ、絶望にはまだ早い。考えるのだ、もっとよくちゃんと。
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