カムパネルラを探して

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 息が上がって、座椅子の手すりに掴まりながら体を起こした。    車窓に顔が映る。すると見慣れた私の顔の後ろに、別の女の子の顔が透明に重なった。  別の女の子? 違う、この顔も確かに私のものだ。どちらもきっと私のはずなのに、全く違う顔をしている。そして同じ制服を着ている。 「どうして……?」  頰を押さえて呟くと、黒いセミロングの髪をした、小ぶりですました目鼻立ちの私の口も、どうして、と動いた。  すると私に重なる私の影──ボブカットの幼く見える女の子の口も、どうして、と動いた。 『──ミサキ!』  ドドォッと押し寄せる濁流、細い木の幹に掴まって耐える女の子の体。 『ミサキ!』  女の子が叫び、私に手を伸ばす。私もお父さんの車窓から懸命に手を伸ばし、 『シホ!』叫んだ、けれど女の子の、シホの掴む木は折れ、私の手はついに届かないまま、シホの体は濁流に飲まれて消えた。 「あっ……」  気が付いた時には頬に涙が伝っていて、銀河鉄道の車窓に映る私の顔は、ミサキの顔に変わっていた。  変わっていた? いや違う、私はずっと前からこの顔だった。ずっと、シホではなくて、ミサキだった、はずなのに。
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