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そう──あの日、大きな地震が起こったのだ。それから海が荒れて、私は濁流の迫る間一髪のところでお父さんの車に乗りこんだ。
その時、逃げ遅れた親友のシホが頼りない木の一本に取り付いているのを見た。
でも結局助けることはできなくて、私はひたすら自分を責めた。
もしあと一歩早く気づけていたら、シホは助かったかもしれない。
幼馴染のシホ。
大好きで大好きで、朝から晩まで二人で笑った。
『私とミサキの家が隣同士なのは、きっと神様が起こした奇跡だよね』
子供の頃シホはよくそう言って、私を抱っこしてはしゃいだ。
捨て犬や猫を拾っては看病し、海に流されたビニール袋やなんかが、死んだ鯨の胃袋からたくさん出てくるのを悲しんでいた、優しいシホ。
歳は私の方が一つお姉さん。
でもシホの方が大きくて、この世界のことをよく知っていた。
なのにどうして?
どうして、シホの方が私なんかよりたくさん生きなきゃならない人だったのに、世の中のために必要な人だったのに。なのに何の取り柄もない私が生き残って、シホが逝ってしまうの?
そんなのだめ、絶対にだめ。シホは死なない、死んでなんかいない。シホ、シホ、シホ……。
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