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考え続けるうち、私はいつしか私を忘れて、シホの時間を過ごすようになっていた。
お母さんに連れられて行った病院では、解離性同一症という病名を告げられた。
私がシホになる時間は、一日のうち数時間から始まって、だんだんと長くなっていった。
初めは自分でもおかしいと気づいていた。でもいつしかシホでいることが当たり前になって、最後には、ミサキだった頃の自分を完全に忘れ果てた。
「だから……」
だからシホはここにいなかったのだ。
だって、私なのだから。シホは私が、私自身の中に生み出した産物だったのだから。
カムパネルラはここにはいない。いるわけがなかったのだ……。
ずっしりと重くなった膝をついて、私はただただ呆然となって、茶色に光る床を見つめた。
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