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「やっと思い出してくれたね、ミサキ」
少し低い大人びた声にどきりとして顔を上げた。
車窓にはミサキに戻った私の顔が映っていた。それもさっきまでのミサキより少しだけ背が伸びて、瞼の腫れぼったさが取れた大人の顔をしている。柄のないワンピースにパーカーを羽織っている。
あれ? と思って窓に触れると、大人になった私はまた幼い顔立ちの制服姿に戻っていった。
そのすぐ隣に、凛とすましたきれいなシホが同じ制服を着て映り込んでいた。黒いセミロングを下ろして。
斜め後ろを振り返る。本当にそこにはシホがいて、口元だけがわずかに笑んでいた。
「シホ! どこにいたの⁉︎ どうして、どうしてすぐに来てくれなかったの、どうして」
「ごめんね、ミサキ……。私はミサキが、私とミサキ自身のことを思い出してくれたら、伝えたい言葉があったの」
「シホ、ごめん、あの時私が、もう少し早くシホに気づいていたら、そうしたら」
「ミサキ」
シホの手が私の両手をぎゅっと包み込む。その手に促され、ふたり並んで座席に座り込んだ。
「ミサキ、あの時は本当にありがとう。必死に私を助けようとしてくれたよね。それから、ごめんね。私がもっと早くに逃げていれば、ミサキのことも、誰のことも悲しませずに済んだのに」
「違う、違うよ、謝りたかったのは私! 私にもっと、もっともっと力があれば、助けられたのに、なのに」
「ミサキのせいじゃない!」
強い叱咤の声と、銀河をそのまま映し出したようなシホの瞳。
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