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「私が死んだのは、誰のせいでもないよ。だからもう自分を責めるのはやめて?」
「シホ、でも」
「それを伝えたかったから、私はここにミサキを連れて来たの」
「だけど私」
「ね。カムパネルラは、ミサキなんだよ?」
「え?」
シホは温かく包んだ私の手を、少し引いて自らの胸に押し当てた。
「ようく思い出して。ミサキに何があったのか。カムパネルラは、どうして死んだのかを」
「どうしてって、だから……」
だから級友のザネリを助けに川に入って、そうして、そのまま、
「思い出して。あの湖で何が起きたのかを」
「みずうみ? ……あ」
薄ぼんやりとけぶる森と、濃紺の湖。その中に赤いなにかが見え始める。
「ゴム、ボートが、赤いゴムボートが、浮かんでる……」
「それで?」
「ボートに、子供が乗ってる。男の子。五歳くらいの、小さな子」
「うん」
「ボートが、だんだん遠くに流れていって、そして」
「そしてその子はどうなったの」
「……落ちた」
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