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チェキを撮った時並みに、距離が近い。
ドキドキが止まらないが、仕事はしなきゃなので、俺はすました顔で壊れた取っ手をスマホのカメラで撮る。
「修理費、結構かかりそうですか?」
「うーん、どうでしょうね? そこは大家さん次第ですけど、故意や無茶して壊したのでないなら……」
「故意じゃないです! 本当に! 嘘じゃないです! 普通にグッて引っ張ったら、ボキッてとれちゃって……」
「う、疑っているわけではないですから! そう簡単に壊れるものでもないし、わざと壊したなんて思っていませんから!」
信じて、とガン見してくる推しの視線に耐えられず、俺は足下のバスマットを見る。
柄覚えて帰って、同じの買おう。
「すみません、大きい声だしてしまって。――何日くらいで直りますか?」
「これから大家さんに連絡して、修理を手配してもらって――ということになるので、そうですね……一週間以内くらいには、直るんじゃないでしょうか」
俺の心境的には、今すぐ修理業者を手配し、今日明日中に直してあげたい。
しかし俺に直すための権限はないので、光の速さで帰社し、オーナーに早く修理してもらえるよう、飯田課長をせっつきまくろう。
「このマンションの大家さん、優しくてきちんとした良い方ですし」
今ぎっくり腰だけど、と心の中でつけ加えた時、侑弥くんが真顔で俺をじっと見ていることに気がついた。
え、何? もしかしてファンだってバレた?
ま、まさかぁ! ないって!
お渡し会翌日の今日だけど、直接顔をあわせたのは昨日の一回だけだし、それも精々一分か二分くらい。
俺は帽子かぶって伊達メガネもかけてたし。
「あの、間違ってたら申し訳ないんですけど……昨日あなた、僕と会ってませんか?」
えーーっ??!!
何で?! 何で新参ファンの俺のこと覚えてんの!?
「ぁ、……えっとぉ……」
ファンバレはマズイ。
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