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「二十四歳にもなって、何また中二病爆発させてんのよ。てかさ、あんたの歴代の推し、もれなく全員燃えてて本当ウケる〜」
SEIRAが逮捕された日の二十時二十六分、会社最寄り駅近くの安居酒屋。
ツマミがのったテーブルを挟み、向かいの席に座っているのは、同級生で幼なじみの岡吉美波。
彼女は俺の心情を一通り聞いた後、レモンサワー片手にケラケラ笑った。
「うるせぇ!」
推しの声帯担当でしかない奴の大炎上を、推し本人と切り離せない、色々な意味で可哀想な俺。
この苦しみは一人では抱えきれない。吐き出したい! 誰か聞いてくれ!
――ということで俺は仕事の合間に、「今日の夜、誰か俺の愚痴を聞いてくれ!」というメッセージを、理解ありそうな奴らに送った。
結果、唯一OKをくれたのが、腐女子兼夢女子のこいつだけだった。
「だってぇ、本当のことじゃん。あんたに見る目がないのか、運が悪いのか、それともあんたが疫病神なのか」
「全部ちげーし。たまたまだ」
「えーっと……一番最初にあんたが推してたのって、『アリスりぼん19』の初代センターの子だよね。たしか、不倫で燃えた子」
「オッサン越えてジジイ趣味とか、マジありえん……」
「しゃーないよ、性癖だもん。不倫はどうかと思うけど、『年上好き』自体は犯罪じゃないしねぇ」
国民的アイドルグループのセンターであった十九歳女子が、妻子持ちの五十すぎの男と好んで関係を一年も続けた気持ちが、俺にはいまだに分からない。
「次は誰だっけ?」
「『Loveきゅ!』のマイマイ……」
「地下アイドルの子だったっけ。妊娠バレからの、結婚理由の即引退だったかな?」
ジジイ好きアイドルに裏切られた俺は、友人に地下アイドルのライブへ連れて行かれた。
そこで出会ったのが、大学生活のほとんどをささげた、二番目の推し。
「そんで三番目が今日炎上した声優、であってる?」
「SEIRAはあくまでユイカの声帯担当なだけで、推し本人じゃない」
「なのにダメージくらってんだ?」
「うっ……」
「さーて、次は何飲もうかなぁ? あんたも新しくビール頼む? それとも日本酒とかにする? あ、お刺身のセット頼むねー」
ちなみに今日ここでの会計は、全部俺持ちだ。
それをエサに呼び出したので、仕方がない。
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