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会社の資料室の片隅で、俺はファイルをめくりながら、大口をあけてあくびをする。
推しの住所と電話番号を知ることになってしまった、一連の出来事のせいで、昨夜はろくに眠れなかった。
俺のこと、キモかったりヤバかったりするファンだと、侑弥くんに誤解されていたらどうしよう……という、絶望的な気持ちのせいで。
「はぁーぁ……」
もう何回目か分からないため息が、俺の口から吐き出された時だった。
ズボンのポケットに入れていた、社用スマホが鳴った。
面倒臭ぇな、誰だよ?
――って、この番号は侑弥くんじゃん?!
「はいっ! スマイルハウス宮田ですっ!」
『こんにちは、お世話になってます。ディアマリン506号室の東海林です』
「ど、どうかされましたか? 修理に不備が? それとも、伺った者の態度が悪かったとかですか?!」
風呂場の取っ手の修理は今日の十時からで、修理業者からは昼前に、作業完了の連絡をもらい済みだ。
だから侑弥くんから電話がかかってくる、ということは、何か良くないことがあったに違いない。
『いいえ。お陰様でキレイに直りました。というか、扉ごと交換になりました。ありがとうございます』
「あぁそんな、お気になさらずっ! ――では、いかがされましたか?」
『廊下の蛍光灯がきれてしまって』
「はい?」
『今度は、エレベーター近くの蛍光灯がきれちゃったんです』
「あー……なるほど」
『新しいのに交換してもらえますか?』
「もちろんです! 明日、昨日と同じ時間ごろ交換に伺います!」
推しからのお願い、ということで、俺は安易に時間まで指定して引き受けてしまった。
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