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でもとりま一目会えただけでもラッキー! 神様ありがとう!
侑弥くん、今日もまぶしいほどにイケメンですね!
「こんにちは。――早く出ないと、しまっちゃいますよ」
侑弥くんの言葉にハッとし、俺は急いでエレベーターを出る。
入れかわりで侑弥くんが乗り込むだろうと思ったのだが、何故か彼は一歩も動かなかった。
だから扉が閉まったエレベーターの前に、俺と彼が並んで立つ形になった。
「……乗らないんですか? いっちゃいましたよ」
「あ、本当だ。まぁ急いでいないので、大丈夫です」
のほほんと侑弥くんが言う。
前も思ったけど……マジで天然なんだな。
いや今回の場合、余裕がある、というべきか?
「きれてた蛍光灯ですが、交換終わりましたので」
「取っ手も今回も、迅速に対処していただき、ありがとうございます」
「お気になさらず。仕事ですし。はー、それにしても今日も暑いですね。体調、お気をつけ下さい」
ヤバイストーカー的ファン認定されないために、もっと侑弥くんと話したいという気持ちを押さえつけ、俺は頑張って一歩踏み出す。
「えっと、宮田さん」
なのに彼が、俺を引き止める。
「は、はい? 何でしょう?」
「もしお時間あるなら、お茶飲んでいきませんか? 会社戻る前に、僕ん家で水分補給はどうでしょう?」
*
これは現実か?
もしこれが夢でなく現実なら、一生分の運を使い果たしただろう俺は、このマンションから出た直後に死ぬのかもしれない。
もしくは、バラエティー番組のドッキリ企画だったりして?
「宮田さーん。アイスコーヒーと烏龍茶、どっちがいいですか?」
おそらくカウンターキッチンの向こうに立つ侑弥くんが、リビングのソファーへ座る俺に聞いてきた。
「で、では、アイスコーヒーで……」
俺は侑弥くんに背中を向けたまま、ひきつり気味な声で答える。
ちゃんと振り向いて返事をすべきだと分かっているが、緊張で上手く身体が動かない。
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