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そう。何と今俺はディアマリン506号室――侑弥くん家のリビングにいるのだ!
エレベーターホールで、侑弥くんから自宅でのお茶に誘われた時、ものすごくびっくりしたし、ちゅうちょした。
一昨日は、「取っ手修理のどさくさついでに、侑弥くんのお部屋をチラッと拝見できたらなー」なんて思った。
しかしこうして正式(?)かつ、ちょっと強引めにお招きいただいた今、心の中に一昨日のあわよくば……のような、いやらしい気持ちはまったくない。
そういう下卑た気持ちを持つ余裕がない。
緊張で心がぱつんぱつんなのだ。
「あのぉ……あなたのファンの俺を家の中へ入れてしまって、本当によかったんですか?」
「宮田さんはファンであることと仕事を切り分けられる、ちゃんとした人だと思ったので。風呂場の取っ手も廊下の蛍光灯も、早々に対応していただけて、本当に感謝しているんですよ」
「そんな……俺は自分の仕事をしただけで……」
「だからこれはそのお礼です」
キッチンから歩いてきた侑弥くんが、木製のおしゃれなローテーブルの上へ、黒色のお盆を置く。
お盆の上には、アイスコーヒーのグラスと、白い小皿へ鎮座するティラミスが、それぞれ二個づつ乗っていた。
「さぁどうぞ」
それらをローテーブルの上へ移動させた後、侑弥くんはグラスを一つ持ち、向かいにあるソファーへ座った。
「あ、ありがとうございます」
推しから勧められたなら、手をつけないわけにはいかない。
俺もグラスを持ち、水色のストローへ口をつける。
「すごく美味しいです!」
氷も入った冷たいコーヒーは、緊張でカラカラになっていた俺の喉を、心地よく潤す。
一口飲んだ後、すぐに続けて一気に半分近く飲んでしまった。
そして気がつく。
「あれ? これ、もしかして氷もコーヒーだったりしますか?」
「はい。その方が薄まらなくていいでしょう? ティラミスもどうぞ」
「は、はい」
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