7・まさかのまさか(中編)

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氷もコーヒーだなんて、手間かけてるな。 侑弥くんはコーヒーマニア、という情報はなかったよな? なんて思いながら、金色の小ぶりなスプーンを手に取り、ティラミスの端をすくい取って口へ運ぶ。 「こっちもすんごい美味しいです!」 甘いもの好きな俺だから、コンビニからデパ地下、有名カフェまで、スイーツは色々食ってきた。 だから断言できる。 このティラミス、マジで超ウマイ! 「どこのお店のですか?」 「僕作ですよ。手作りです」 「マジっすか?! ――あ、けど、そっか。経歴的にプロの味なの、全然おかしくないんですよね。いやでも本当の本当に、ガチでうまいです。これ」 「ハハハ、僕のWikipedia読みました?」 「えっと……はい」 忘れていたわけではなかったのだが、侑弥くんの趣味は、料理と食べ歩き。 そして彼は、高校卒業後調理師学校に通い、その後フレンチ店で働いていた――という経歴の持ち主でもある。 「ティラミスは北イタリア生まれのデザートだから、フレンチではないんだけどね」 くすくすと、上機嫌な様子で侑弥くんが笑う。 「……いいのかな、俺」 「何がです?」 「自分はただのいちファンにすぎないのに、家に上げてもらって、おまけに手作りティラミスまで食べさせてもらえるとか……。他のファンに知られたら、袋叩きにあいそうだな、なんて」 俺は冗談めかして「へへ」と笑い、誤魔化すようにもうひとすくいティラミスを食べた。 「大丈夫ですよ。僕と宮田さんが黙ってさえいれば、誰も知ることはないですからね。それに家へ招いたのは、あなたが同性だからですし」 「へ?」 「同性なら、仮にファンであることがバレても、たいして炎上はしないでしょ?」 「あぁ、なるほど。それはそうでしょうね」 確かにスターがファンと仲良くした場合、同性と異性では、燃え上がり方が段違いだもんな。 異性だと、即恋愛感情と結びつけてしまいがちだから。
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