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氷もコーヒーだなんて、手間かけてるな。
侑弥くんはコーヒーマニア、という情報はなかったよな?
なんて思いながら、金色の小ぶりなスプーンを手に取り、ティラミスの端をすくい取って口へ運ぶ。
「こっちもすんごい美味しいです!」
甘いもの好きな俺だから、コンビニからデパ地下、有名カフェまで、スイーツは色々食ってきた。
だから断言できる。
このティラミス、マジで超ウマイ!
「どこのお店のですか?」
「僕作ですよ。手作りです」
「マジっすか?! ――あ、けど、そっか。経歴的にプロの味なの、全然おかしくないんですよね。いやでも本当の本当に、ガチでうまいです。これ」
「ハハハ、僕のWikipedia読みました?」
「えっと……はい」
忘れていたわけではなかったのだが、侑弥くんの趣味は、料理と食べ歩き。
そして彼は、高校卒業後調理師学校に通い、その後フレンチ店で働いていた――という経歴の持ち主でもある。
「ティラミスは北イタリア生まれのデザートだから、フレンチではないんだけどね」
くすくすと、上機嫌な様子で侑弥くんが笑う。
「……いいのかな、俺」
「何がです?」
「自分はただのいちファンにすぎないのに、家に上げてもらって、おまけに手作りティラミスまで食べさせてもらえるとか……。他のファンに知られたら、袋叩きにあいそうだな、なんて」
俺は冗談めかして「へへ」と笑い、誤魔化すようにもうひとすくいティラミスを食べた。
「大丈夫ですよ。僕と宮田さんが黙ってさえいれば、誰も知ることはないですからね。それに家へ招いたのは、あなたが同性だからですし」
「へ?」
「同性なら、仮にファンであることがバレても、たいして炎上はしないでしょ?」
「あぁ、なるほど。それはそうでしょうね」
確かにスターがファンと仲良くした場合、同性と異性では、燃え上がり方が段違いだもんな。
異性だと、即恋愛感情と結びつけてしまいがちだから。
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