7・まさかのまさか(中編)

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「はい。もう戻らなきゃです。侑弥く――じゃなくて東海林さんが聞き上手だから、話しすぎちゃいました。長居してしまい、すみません」 「いえいえ。お仕事中なのに、僕の方こそすみません。一度くらいこんな風にファンの人と話してみたいな、と思ってて、つい引き止めちゃいました」 「引き止めてもらえて光栄です、なんて! 今月の二十日からの舞台、楽しみです。全通は無理なんですけど、チケットとれたので見に行きますね」 俺がそう言ってソファーから立ち上がると、侑弥くんが俺のヒザあたりを見て、「あ」と言った。 何だろう? と、俺も自分のそのあたりを見て気がつく。 ソファーの上に直径三センチ弱くらいの、まるく平たい何かが落ちている。 俺が座る前にはなかったものだ。 つまんで拾い上げて見ると、それにはツノとコウモリ羽を持つキャラクターの絵がプリントされていた。 ――あっ! コレ、今朝の朝礼後に久保田から、「ダブったからやる」と押しつけられたヤツだ! 現在某回転寿司とコラボしているソーシャルゲーム『パズデビ』の、コラボグッズの缶バッジを、ズボンのポケットの中に入れたままだったのを、俺はすっかり忘れていた。 さっきスマホを取り出した時、スマホと一緒に出てきてしまったのだろう。 「それ、パズデビの缶バッジですよね。宮田さん、パズデビやってるんですか?」 「えぇまぁ、ゆるくですけど」 久保田はコラボグッズのために回転寿司へ行くガチ勢だけど、俺は何となくぼんやり続けている勢だ。 「パズデビ、僕もしてるんですけど、フレンドになりません?」 「ええっ?! いいんですか?!」 「ダメなら言いませんよ。最近、結構フレンドが引退しちゃって、困ってたんです」 俺は私用のスマホを取り出し、ソシャゲのアプリを起動させ、侑弥くんのパズデビのフレンドコードを入力する。 ……マジでここ数日の俺のラック値、どうなってんの? 幸運の乱数、かたよりすぎでは?? ラッキーフィーバー後が怖いんですけど!! でも嬉しい!!!
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