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「はい。もう戻らなきゃです。侑弥く――じゃなくて東海林さんが聞き上手だから、話しすぎちゃいました。長居してしまい、すみません」
「いえいえ。お仕事中なのに、僕の方こそすみません。一度くらいこんな風にファンの人と話してみたいな、と思ってて、つい引き止めちゃいました」
「引き止めてもらえて光栄です、なんて! 今月の二十日からの舞台、楽しみです。全通は無理なんですけど、チケットとれたので見に行きますね」
俺がそう言ってソファーから立ち上がると、侑弥くんが俺のヒザあたりを見て、「あ」と言った。
何だろう? と、俺も自分のそのあたりを見て気がつく。
ソファーの上に直径三センチ弱くらいの、まるく平たい何かが落ちている。
俺が座る前にはなかったものだ。
つまんで拾い上げて見ると、それにはツノとコウモリ羽を持つキャラクターの絵がプリントされていた。
――あっ! コレ、今朝の朝礼後に久保田から、「ダブったからやる」と押しつけられたヤツだ!
現在某回転寿司とコラボしているソーシャルゲーム『パズデビ』の、コラボグッズの缶バッジを、ズボンのポケットの中に入れたままだったのを、俺はすっかり忘れていた。
さっきスマホを取り出した時、スマホと一緒に出てきてしまったのだろう。
「それ、パズデビの缶バッジですよね。宮田さん、パズデビやってるんですか?」
「えぇまぁ、ゆるくですけど」
久保田はコラボグッズのために回転寿司へ行くガチ勢だけど、俺は何となくぼんやり続けている勢だ。
「パズデビ、僕もしてるんですけど、フレンドになりません?」
「ええっ?! いいんですか?!」
「ダメなら言いませんよ。最近、結構フレンドが引退しちゃって、困ってたんです」
俺は私用のスマホを取り出し、ソシャゲのアプリを起動させ、侑弥くんのパズデビのフレンドコードを入力する。
……マジでここ数日の俺のラック値、どうなってんの?
幸運の乱数、かたよりすぎでは??
ラッキーフィーバー後が怖いんですけど!!
でも嬉しい!!!
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