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「じゃぁ生中追加で。――『二次元の美少女カタログジャンルは、絶対そういう炎上ないからいいよ』って、『ムンドリ』勧めてきたのお前だったよな」
『ムンドリ』とは、ソーシャルアイドルゲーム『ムーンライト★ドリーミングディーバ』の略で、ユイカはそれに出てくるキャラクターの一人だ。
大学を卒業してから約一年と三ヶ月、今日の昼まで俺はユイカに夢中だった。
「そうだけど、声優はそこに含まれませーん。中の人は三次元で、二次元キャラじゃないもん。あんたの推しのユイカは、担当声優のとばっちりで燃えてるだけ。ユイカ自体は悪いことしてないんだから」
「本当、そうなんだよなぁ……」
「まぁ、キャラと声優を同一視させるような売り方してるゲーム勧めたのは、私が悪かったわ。ごめん」
タブレットで追加注文を終えた美波が、軽く頭を下げる。
責めておいて何だが、俺の理不尽な八つ当たりに、美波が謝る必要はない。
「いや、お前は全然悪くないし。こっちこそゴメン」
己の情けなさを誤魔化すように、俺は唐揚げをぽいと口へ放り込み、咀嚼しながら行儀悪く尋ねる。
「なぁ。他に何か良い、俺が推せそうなの知らねぇ? あんま炎上しなさそうなヤツ」
「そういわれてもなぁ。私は女だから、男性向けジャンル詳しくないし」
「ソシャゲだと今は、『四次元手記』が流行ってんだっけ?」
「VtuberとかYouTuberとかはどう?」
「ダメ。切り抜きとかたまに見てるし、嫌いじゃないけど、よく炎上してんじゃん」
「うーん……無理に次を探さず、オタク界隈からちょっと離れてみてもいいと思うけどね。あんた前に、キャンプやバイクに興味あると言ってたじゃん? そっち方面はどう?」
幼なじみのOLからの提案を、俺は首をふって断る。
「推しにつけられた傷は、新しい推しで癒すんだよ」
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