8・まさかのまさか(後編)

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「ところで真伍くんて、食べるの好き?」 「えぇはい。美味しいもの食べるの好きですね。肉や寿司も好きですけど、ケーキとかアイスとか甘いのが好きで、店調べて色々食ってます」 「ふーん。甘党なんだ」 「そうっすね。太らないために、これでも一応ジム行ってたりするんですけど」 あいつのファンは不潔なデブスばかり、と他のファンから笑われないよう、昔から俺なりに外見には気を配るようにしている。 今はいないが、過去に何人か彼女もいたし、それくらいの外見は保っているつもりだ。 (まぁ彼女たちとは全員、俺が推し活を優先するせいで、モメて別れたけど) 「あぁ本当だ。細く見えるけど、確かに腕とかしっかり筋肉ついてるね」 「へへへ、でしょ?」 「それじゃぁ次は、真伍くんお勧めの店に、スイーツ食べに行こうか」 「え?」 「嫌?」 ニコッと笑み、ナチュラルに二回目の予定を入れてこようとする侑弥くん。 「――いいえっ、嫌とかでは全然なくって……次、ですか……」 一方俺は、ほぼほぼ『次』が確定したことが嬉しくて、気持ち悪い笑顔がうかんでいるだろう顔を伏せて隠す。 「気が早いけど、今日が終わってもまた、真伍くんとこんな風にご飯食べたり、遊びたいなって」 「……侑弥くんが望むなら、いくらだって無限にOKです! 店探しておきます!」 「うん、よろしくお願いするね」 この会話の三十分後くらいにお好み焼き屋を出て、近くのバーで小一時間くらい飲み、侑弥くんをマンションまで送り、夢のような時間は終わった。 俺は駅までの道を一人で歩きながら、アルコールが回った脳ミソでつらつら思い、考える。 推しと一緒に飯と酒なんて――最高の時間すぎた。 侑弥くんてば常にキラキラしてるし、至近距離から見ても毛穴ないし、良い匂いするし、化粧してないのにまつ毛長いし、ちょっと天然で可愛くてセクシーだし、丁寧だし、優しいし……最高&最高としか言いようがない。 飯田課長のかわりに蛍光灯を変えに行ってから、夢みたいなことがずっと続いている。 俺、マジで死期が近かったりして? それはやだなぁ。せっかく侑弥くんと友達になれたのに。 俺は首をかたむけて夜空を見上げ――聞きそびれた疑問を思い出す。 侑弥くんは、どうして俺を友達にしてくれたんだろう? 萌葱くんのことをかんがみるに、侑弥くんの友達認定ハードルは、かなり高いぽいのに。 俺が貴重な男ファンだから? パズデビプレイヤーだから? うーん……それだけが理由じゃないだろうことだけは分かる。 けど、それ以外の他の理由が、皆目見当がつかん。 本当に、何でなんだろう? 友達になった後で、「何で? どうして?」と聞くのはウザいよなぁ。 聞くタイミングを逃してしまった……。 でもまぁ結局のところ、友達にしても問題なさげな奴ぽかったから、以上の答えなんてないのだろうし。 今後聞けそうなタイミングがあれば聞いてみる、ということでいいか。
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